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クラルヴェルン・ブロードキャスト

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  • 07/06/21:46

Stargazer - 6 -

「凄い……」
遺跡を構成する高度な電子機器の森林の中で、少女は感嘆のため息をついた。
これほど高度な文明が、かつてヴァレフォールにあったのだ。
人類でもなければ、今数多の惑星に散在している異星人達でもない。
数百万年前。もしかしたらそれ以上前の超文明。
「ヘレナ博士やヒラガちゃんも来れば良かったのに」
一番偉そうな席に座り、ゆったりと背にもたれて一休みする。先日は思いつきで機動艦隊のエンジンを開発したが、すぐに飽きてしまった。でも今回は、もしかしたら一生を研究に捧げる事になるかもしれない。
モニターに流れる意味不明な文字の羅列。少女はその文字群が三十種程度の記号であり、コンソールのキーに刻まれている記号と一致していることにすぐに気がついた。
「……『何が知りたい?』そう言っているの?」
少女はおぼろげに見当をつけながらコンソールを叩いた。人類と全く異なる精神構造の文明の言語。ナマコニアンやインセクト達の言語とも異なる。もちろん当てずっぽうだ。

(文書考案中)
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Stargazer - 5 -

一面の瓦礫の山。
一面の焼け野原。
それが惑星セレニティの惨状だった。
「一体どうしたらここまで破壊できるんだろうねえ」
メカいのらの破壊活動とカンナギ地上軍の砲撃、イズモ艦隊の空爆によりカンナギの首都は壊滅状態だ。二千万の人口は混乱の中で半分以下にまで減少し、今もなお戦いは続いている。
いのらによって戦車が蹴られ、放物線を描きながらビルにぶつかって爆発する様を遠目に見つつ、俺はエアカーを走らせていた。
「どこへ行かれるのですか?」
後部座席から身を乗り出してプリスが尋ねてきた。そう言えば殆ど何も説明していなかった気がする。
「まずは、カザン博士が消えたという遺跡とやらへね」
何か小さな手がかり一つさえあれば見つけられる自信があった。



その遺跡の外見は巨大な卵の殻に似ていた。上半分がドーム状の建造物の様に突き出ている。
外壁内壁の材質は石材なのかセラミックなのか金属なのか……。
「勝手に入っても良いのでしょうか…?」
「ダメなんじゃないかな。関係者以外立入禁止という張り紙もあったし」
不安げなプリスの問いに苦笑しつつ。遺跡内部に入った俺たちの目に入ったのは、巨大なICチップやコンデンサが林立した電子部品のジャングルだった。薄暗いドームの中を、発光したヒートシンクがおぼろげに照らす。
しかしこんな遺跡、誰が作ったんだ?
なんだかんだ言って人類入植から一千年以上経つし、入植初期の施設という説が有力らしいが、ナマコニアンの学者達に言わせるとかつて滅びた異星種の遺産ということらしい。
カザン博士は調査中、チームが目を離した先にどんどん先に行ってしまったらしい。困った奴だ。



「……これか」
「これを探していたんですか?」
「いや、何となくそれっぽいものなら何でもいいのさ」
遺跡の中央部にあったのは、一台のコンピュータを囲んでいる沢山の椅子とモニター。しかもここだけ人類サイズだ。もっとも、モニターに映っている図表や文字は、既知のヴァレフォール言語のどれにも当てはまらなかったが。
「船の操縦室みたいですね」
「オペレーティングルームという奴じゃないのかな」
とりあえず偉そうな位置の席についてみる。見た事も無い様な配列のキーボード。もちろん俺には情報を引き出すことなど叶わない。叶わないが……。
この端末だけホコリが溜まっていない。使われた形跡があるということだ。だとすれば……。
俺はサングラスを取り、意識を集中した。
「……どうしました?」
視界がぶれていき、プリスの声が遠ざかっていく。

Stargazer - 4 -


「なんてこった!」

パッシブジャンプゲートから出てきた俺たちの前に現れたのは、大小六十隻近くの大艦隊。
もちろんアーヴグストの『黒い八月一日』なんかじゃない。この艦艇のフォルムと菊の国章は、星団最強と呼び名も高いイズモの皇国海軍だ。
忙しくワーキングドロイドが飛び回っているのを見ると、補給中か補修中らしい。
そうこうしていると律儀に正式なプロトコルに則り、通信モニターに黒髪の奇麗なお姉さんが現れる。
『こちらはイズモ皇国連合艦隊です。カンナギ宙域は民間船は立ち入り禁止のはずですが?
貴艦の所属と登録名をどうぞ』
当然ながら誰何される。「所属は海賊で船名はStargazerです」と答える訳にもいかない。
もっとも、答えなくても出自を解析されるのは時間の問題だろう。ネルヴィルの治安がいいのは俺たち海賊が少ないからじゃなく、海賊の取り締まりが厳しいからだ。
「所属は海賊で船名はStargazerです」
そう返答すると、俺は一気に船の熱核ジェットエンジンを吹かした。Stargazerは駆逐艦ながら速度には定評のあるガイルボーン級だ。今までも追いかけっこでは常に勝ち続けてきた。
船体が軋み激しく揺れる、眠っていた黒翼のプリンセスが寝ぼけつつあたりを見回していた。
「プリス! そのまま寝てろ! 顔を上げるんじゃないぞ!」
そう言った矢先に数条の死のビーム砲が船体をかすめていった。さすが礼節の国。海賊に対しても威嚇射撃を忘れない。
『停船せよ! さもなくば撃墜す!』
「できるものならやってみな!」
根拠の無い強がりを言うのは俺の悪い癖だ。そもそも俺一人でこの船を満足に動かす事はできないし、一発でもビームが直撃すればこの船は爆散する。船体表層のバリアがかすめたビームを打ち消し、その作用で激しく明滅した。プリスは閃光と振動と俺の怒声でおろおろしているだけだ。
「@4分!」
後少しだ、最大戦速にまで加速すればイズモ艦隊の射程圏内から抜け出せる。抜け出した後どうなるかは知らん!
しめたことに諦めたのか、追ってくる艦艇が減ってきた。そりゃそうか、奴らには奴らでここまで遊びにきた訳じゃない。メカいのらを倒すという崇高な任務が……

……というのは甘かったのか、八咫烏級空母から艦載機が発艦するのが見えた。奴らは本気か。










「司令官殿!」
「……何か?」
「マイヅルからの緊急連絡です。至急、ワタツミに戻れと……」
司令官と呼ばれた女性が優雅に扇を広げた。
「ほう、インセクト・ネストが動いたか?」
「いえ、……これをご覧ください」
映像の先にはイズモ本国を蹂躙するメカいのらが映し出されていた。










なんとなく助かったらしい。


「……どうぞ」
「うん?」
プリスフォーリアが差し出したのはヴァリアント製のティーカップと、その中身の黄金色の紅茶。
何となく身体に良さそうなハーブの香りと蜂蜜の味だった。

Stargazer - 3 -

「うほ?」
気がつくとどうやら艦長席で寝てしまっていたらしい。何故か毛布までかかっている。隣では同じ様に毛布に包まって眠っている黒天使がいた。船内のどこかから持ってきたのだろう。
「寝室で寝ればいいのに……」
シャワー室もあるのだが、そう言えば着替えも持ってきてないな。まあ現地で買えばいいか……。
と、呟きつつ計器類を確認する。モニターには見慣れない数字と図表が並び、なんとなく非常に嫌な予感がする。慌ててAIに座標を計算させた。
『Saylunasia system - Hyperspace : X431 / Y-212 / Z-974 / A212』
よく生きてたな俺。
どうやらかなりズレた所まで移動してしまったらしい。
パッシブジャンプゲートの向こう、何が起こるかわからない異空間(ハイパースペース)の中で居眠り運転とは。こんな小さな船、ちょっとした弾みでバラバラに霧散してもおかしくない。
「やれやれだぜ」
俺は航路修正をかけつつ超空間通信の起動を試みる。
画質の悪いモニターに現れたのはフードを目深に被った緑灰色の肌の種族。
「アンタか。ニモーディアンには用はない。犬耳を出せ」
「……ミャノコフ大統領は会議中である。私が全ての用件を承る……」
「ではアーヴグスト艦隊との合流時刻を変更したい。こちらジャンプトラブルで遅れそうだ」
「……ベルトリッチよ、その手はずは変更となった。……貴君は単独でカンナギへ向かい、カザン博士を捜索せよ」
「話が違うようだが?」
「……話は変わっていない。ただ状況が変わったのだ。アーヴグストの『黒い八月一日』はニモーディア星に出現した機械怪獣を攻撃するために既に出撃した……」
モニターに火を噴きながら異星人都市を破壊する機械怪獣が映し出された。
「ああそうかい。報酬の方は相談させて貰うぜ」
見境無く星団各所で怪獣出現か……。
怪獣対策を口実として軍拡競争が始まりそうだ。ヴォンドレーノ社の株を買い足しておこうか。
「それ以前に、人類も異星人も怪獣に蹂躙されるのかね」

Stargazer - 2 -

「プリス。港に行こう」
「港……ですか?」
ネルヴィル・アストロレースなんて見てる場合じゃない。
コートを着ると、強引に黒天使の手を取って外に出かける。

かつてのリルバーン帝国には16個の宇宙艦隊が存在しヴァレフォールの五つの星団に派遣していたとか。そして異星人たちを天空の高みから支配していたという。
「もっとも、今は見る影も無いがね」
「はい?」
独り言に律儀に返すプリス。可愛い奴だ。なでなでしてやろう。
さてその栄光の16個艦隊は、全滅したか退役したか修理中だかで一個艦隊も存在しない。 
そんな関係で、リルタニアの宇宙港の規模は星団一だ。軍用だったため利便性に欠けるだとか、老朽化が進んでいるとか、そういう問題はおいといて。

いくつかの手続きを経て、ポートのガレージの扉が開いた。だだっ広い空間に一隻の船が見える。
ここから先は重力制御が働いていない。数百メートル向こうの船めがけて、俺はテラスから飛び降りた。
「…S t a r g a z e r 」
天使らしく黒い翼をはためかせてついてきたプリスが、船にペイントされた文字を見て呟く。
「俺の船さ」
「御主人様は一体なんなんでしょう?」
「海賊に決まってるじゃないか」
「……」
やれやれだぜ。

この船そのものは帝国のガイルボーン級艦の改造だ。所謂フリゲート。
「船に乗った事はあるかい?」
「……難民船なら。倉庫で丸まってたくらいしか」
それはそれは。そんなお嬢さん然としていられちゃ解らないってば。
「とりあえず、その辺の席に座ってててくればいいよ」
俺は制御コンピュータに発進準備を指示すると、管制に出港灯を出させる。
スターゲイザーは定員15人の船だ。正常に運行するのは最低でも5人は必要なのだが、今回は面倒な事はコンピュータに任せる。いのらと戦う訳でも無し。
「S t a r g a z e r発進準備よろし、発進を許可されたし」
『発進を許可する。よい旅を』
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